フローラ・ハイマン

フローラ・ハイマンはダイエーのバレーボール選手として大活躍をしていたが、
1986年1月22日松江での日本リーグの試合中に亡くなった。

私はそのシーンをテレビで見ていた。
ネット横のベンチに座っていた彼女が突然コートの方へうつぶせに崩れ落ちた。
少しして選手たちが恐る恐る周囲に集まった。
が、ただ立っているだけで誰も何もしなかった。何とかしろよ。私は思わず声を出した。
もし心停止なら数分で重大な脳障害を残し、心拍の再開も難しい。
10分以上も経過して担架が到着し彼女は搬出された。
しかし結局その間誰も何もしなかった。

この状況は全米のテレビでも放送され「何もしない日本人」と強い非難を浴びた。
当時欧米では市民による心肺蘇生はすでに当然の行為であったが、日本では無いに等しかった。
実態は「何をすべきか分からない日本人」だったのである。

その後も同様の事故が重なり、救急救命士制度の設立や市民研修の拡大につながってきた。
しかし昨年、練習中に倒れ死亡したサッカーの松田選手の場合に見るように、
システム的な対応はまだ不十分である。

突然の心停止はほとんどの場合心室細動である。
治療には除細動器またはAEDが必須で、
除細動までの時間が短いほど救命率は高い。
人が突然倒れ、意識と呼吸が無ければ心停止である。
直ちに救急隊(除細動器携行)を呼び、到着まで胸骨圧迫(心マッサージ)を続ける。
緊急事態の中でこれを正しく行うためには繰り返し訓練を行う必要がある。
どうすればいいか分かれば一歩踏み出して「何かする日本人」になれる。

当院では毎年新生児と成人の心肺蘇生法の講習会を行っている。
受講者はグループに分かれ、指導者と一体になって一連の処置法を学習する。
会場は終日笑いと熱気に包まれる。

※2012年6月23日付記事 (新井 達潤 先生)