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肝胆膵外科

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肝がん

【肝がんとは・・・】

肝臓は主にお腹の右上部に位置する体の中で最大の臓器で、重量は成人で800-1500gにもなります。
がんによる部位別死亡率をみると、原発性肝がんは男性では3番目、
女性では4番目に多い結果と報告されています(2003年)。

肝がんはさらに肝細胞がんと肝内胆管がん、その他のがんに分けられます。
 

【種類】

(1) 原発性肝がん

【1】がんによる部位別死亡率をみると、原発性肝がんは男性では3番目、女性では4番目に多い結果と
報告されています(2003年)。

肝細胞がんは原発性肝がんの約90%を占めます。また肝細胞がんの80%はC型肝炎ウィルス、
15%はB型肝炎ウィルスの持続感染が原因です。

お酒による肝障害のみが原因で発生する肝がんは少ないと言われています。そこで肝細胞がんの予防には
この肝炎ウィルスへの感染予防と、感染してしまった場合のウィルスの除去がとても大切になります。
現在では肝炎ウィルスに対する治療薬も開発されておりますので以前に比べ治療が可能となってきました。

【2】肝内胆管がんは原発性肝がんの約5%で、肝臓内にある胆管細胞から発生します。
肝内結石症や硬化性胆管炎(PSC)などが危険因子として解っていますが、
肝炎ウィルスとの関係は肝細胞がんほどはっきりしていません。

【3】その他のがんには前2者の混合型がんや胆管嚢胞腺がん、小児にできる肝芽腫などがありますが、
いずれも発生はまれです。

(2) 転移性肝がん

血流が豊富なため他臓器(胃、大腸、膵臓、乳腺など)のがん細胞が血流に乗って肝臓に到達し易いという特徴が
あります。このような血行性転移によってできた肝臓のがんに対する治療は、原発巣(元のがん)の種類や状態に
より総合的に判断することが必要です。

 

【症状】

肝臓がんに特徴的な症状はなく、他の消化器のがんと違い、かなり進行した場合でも無症状のことがほとんどです。
肝臓が「沈黙の臓器」といわれる所以です。これは肝臓の機能に充分な余力(肝予備能)があるためで、
少々の機能低下では症状が現れ難いためです。
しかし肝炎ウィルスによる肝障害が進行し肝硬変になると、黄疸・腹水貯留・浮腫・吐血・意識障害などの症状を
呈するようになります。
ただし、これらの症状は肝不全に伴うもので肝がんによるものではありません。
肝がんによる症状としては上腹部の腫瘤や腹痛などがありますが、いずれも肝がんに特有のものとは言えません。
肝炎ウィルスに感染している場合は症状に関わりなく、定期的に検査を受ける必要があります。

 

【肝がんの診断】

(1) 腫瘍マ-カ-

腫瘍マ-カ-とはがん細胞が作る物質やがんに反応して作る物質のことで、主に採血により調べます。
肝細胞がんではAFPとPIVKAがあります。また肝内胆管がんではCEAやCA19-9、DUPANなどがあります。
しかしいずれもマ-カ-だけでは十分ではありません。

(2) 画像診断

視覚的にがんを診断する方法で、超音波検査・CT・MRI・血管造影などがあります。いずれにも長所短所があり、
複数の方法を駆使してより正確な診断にたどりつくことができます。

また画像診断では放射線科医の存在がとても重要です。多くの画像は専門医により正確に読影されることで
正しい診断が得られます。

(3) 針生検

以上の方法でも確定診断が得られない場合に行います。これは超音波で病変部に針を刺し、
得られた組織の中でがん細胞を確認する方法です。がんのできた場所によってはできない場合があります。
また出血やがん細胞をかえって散布する危険もあり、必要性を良く吟味しなくてはなりません。

 

【肝がんの治療】

(1)原発性肝細胞がん

肝切除術:
手術により腫瘍を含め肝臓を切除する方法です。
確実性はありますが、出血、・胆汁漏・術後感染症(特に耐性菌)・胸腹水などの合併症の危険があります。
特に術後の肝不全は多臓器不全の引き金となり、生命にかかわる危険が少なくありません。

これは肝臓切除や出血・感染を契機に肝機能が生命維持に不十分なレベルまで落ち込むことを指し、
術前の肝予備力が充分でないことが主な原因です。

そこで現在は術前の肝機能により肝障害度をA、B、Cの3段階に分けて、Aと一部のBの段階の人に腫瘍の条件を
加味して手術をするようにガイドラインで定められています。
特に最も多い肝細胞がんでは多くがウィルス性肝炎に罹患していますので、術後の肝不全の危険が大きくなります。

PEIT:
エコー下あるいはCTガイド下にがんに針を刺し、エタノールを注入してがんを凝固壊死させる治療法です。

肝動脈塞栓術:
通常の肝細胞は門脈と動脈から栄養を受けていますが、肝細胞がんでは主に動脈から栄養を受けるという特徴があり
ます。そこでがんに栄養を送っている動脈を途絶させて兵糧攻めにしようというのがこの塞栓療法(TAE)です。

この方法のみで完治できる場合はまれですが、繰り返すことでがんを押さえ込む効果があります。
がんに栄養を送る動脈に抗がん剤を注入したのち、動脈にスポンゼル(スポンジのような物質)で栓をして、
がんを壊死させる治療です。

マイクロ波凝固療法:
エコー下、CTガイド下あるいは開腹下にがんに針を刺して、マイクロ波でがんを凝固、壊死させる治療です。
肝予備力が切除に充分でない場合に適応となりますが、病巣の数や大きさによっては困難となります。
また体表から針を刺し難い場合には開腹して行うこともあります。

ラジオ波凝固療法:
マイクロ波と同じ方法でラジオ波を使ってがんを凝固、壊死させる治療です。

放射線療法:
最近陽子線や重粒子線による肝細胞がん治療が一部の施設で行われています。

化学療法:
肝内胆管がんや転移性肝がんでは手術できない場合には化学療法が行われることがあります。
方法としては経口薬や点滴により全身に投与する場合と、肝動脈から注入する(動注療法)場合があります。

肝移植:
がんが肝臓全体に及ぶ場合や肝機能が不良で手術できない場合に検討します。
本邦では脳死肝移植はドナ-が限られているためほとんど行われておりません。
その代わりに一定の条件を満たせば、近親者の肝臓の一部分を移植する方法(生体肝移植;LDLT)が
保険適応となっています。

 

(2)転移性肝がん

肝臓以外にがんが存在しない場合には、転移性肝がんに対し積極的に肝切除術が行われており、
生存率が向上しています。当科でも転移性肝がんに対する肝切除術は増加傾向にあります。

しかし、どの治療法が優れているというものではなく、各治療方法に特徴があり、患者さんそれぞれの病態に
合わせて各治療法が選択される事になります。

即ち、患者さんの全身状態、肝機能ならびに肝細胞がんの大きさ、個数、存在部位などを総合的に判断し、
適切な治療方法を決定します。

 

【肝がんの外科治療と当科での治療成績】

肝がんに対する肝切除術は、がん周囲の正常肝組織を含めてがんを完全に取り除くもので、
通常その切除範囲はがんの栄養血管の及ぶ領域となります。

外科治療の合併症としては一般の手術でみられるもの以外に、肝切除術後に特有な術後肝不全があります。
これは手術を契機として徐々に肝機能が悪化していく病態で予後不良です。

当科では平成13年に残念ながらこの合併症で一例の方が亡くなられましたが、それ以後の発生例はありません。

がん治療の成績は一般に治療5年後の患者さんの状態(生存、再発等)で評価されます。
1997年1月より2004年12月まで当科で外科治療を行い、その後の経過がわかっている50例の治療成績は、
術後5年(60ヶ月)での生存率は64%、無再発率(全く再発なく経過している)は23%です。
再発された方は再手術を含め、上記のいずれかの方法で治療を行っています。

肝細胞がんは再発率が高い疾患ですが再発時にも初回と同様の治療をおこなうことで長期生存が期待できます。
他のがんと同様に、再発を早期に発見するためには定期検査が非常に大切です。