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胸部外科

取り扱い疾患

肺がん、肺良性疾患(自然気胸他)、縦隔腫瘍などです。代表的な病気については以下を参考にしてください。

 

肺がん

【疫学】

肺がんは1998年に胃がんを抜いて日本のがん死因のトップになりました。

(男性では1993年にトップになりました)。肺がんの治る率は若干良くなってきましたが、
罹患率が急速に上昇してきています。2002年には約5万6千人が肺がんで亡くなり、
がん死亡の5分の1を占めています。

 

【原因】

肺がんの原因でもっとも影響が大きいのが喫煙で、わが国の男性の肺がんの70%、女性の肺がんの25%は
本人の喫煙が原因と考えられます。

喫煙以外では砒素・アスベスト・クロムなどを扱う職業に従事した人、遺伝的素因、室内空気汚染、大気汚染、
呼吸器の病気、高脂肪摂取などが考えられています。

逆に、野菜、果物を多くとる人に肺がんが少ないことがわかっています。

喫煙者の肺がん死亡率は非喫煙者に比べて、4.4倍と高くなっております。
また、1日20本以上タバコを吸う夫の妻は、タバコを吸わない夫の妻に比べて約2倍肺がんになりやすいと
報告されています。

 

【症状】

早期は無症状ですが、進行がんでも無症状のことがあります。

胸部症状として咳、痰、血痰、胸の痛み、呼吸困難などがみられます。
さらにがんが周囲の臓器に広がると胸や肩の痛み、上肢のしびれ、声のかすれ、食べ物の誤嚥などが
見られるようになります。全身症状では全身倦怠、発熱、体重減少などがみられることがあります。

肺がんは血行性転移しやすいがんで各種臓器に転移するといろいろな症状が出てきます。
転移しやすい臓器は肺、脳、骨、肝臓、副腎などです。

・脳転移:頭痛、吐き気、発語障害、意識障害、精神障害、麻痺など
・骨転移:局所の痛み、四肢の麻痺、神経痛、骨折など
・肝転移:転移巣が小さいときは症状なし、黄疸、腹水貯留など

 

【診断】

(1)胸部レントゲン

一般検診として行われています。
小さい病変、やや大きくても骨・心臓・横隔膜などに重なって発見しにくいことがあります。

(2)胸部CT

非常に小さいがんも発見されるようになってきました。大変有用な検査法で、
最近は検診に導入されるようになってきました。

(3)喀痰検査

気管の中枢にできたがん、進行したがんなどの診断に有効です。

(4)気管支鏡検査

気管の中に内視鏡を入れ、気管支の中を観察し、細胞や組織を採って病理診断します。
通常は局所麻酔下で行われますが、つらい検査なので当院では眠らせる薬を投与して行っています。
合併症として局所麻酔薬のアレルギー(ショック症状、吐き気、嘔吐など)、出血、気胸などがあります。

(5)経皮肺生検

超音波やCTで病巣の場所を確認して、局所麻酔をした後細い針を病巣まで挿入し、
細胞、組織を採って病理診断します。

(6)MRI

磁気を使っておこなう検査です。がんの周囲組織への広がりなどを調べます。
脳転移の有無についての診断は、CTより優れています。

(7)PET

陽電子(ポジトロン)を使っておこなう検査です。がんかどうかの診断、リンパ節転移の有無、
抗がん剤治療後の効果判定などに有用です。

(8)骨シンチ

骨への転移を調べます。

(9)胸腔鏡下生検

気管支鏡、経皮肺生検で診断がつかない場合、全身麻酔での胸腔鏡による生検で診断します。

 

【肺がんの種類】

扁平上皮がん

中枢の太い気管支からの発生が多く、男性に多く、喫煙との関係が深い。

腺がん

肺がんのなかで最も頻度が高く、女性の肺がんの大部分を占めます。喫煙との関係は明らかではなく、
肺の末梢から発生することが多い。

大細胞がん

肺の末梢から発生することが多く、進行も比較的早い。

小細胞がん

男性に多い。進行が早く、急速にリンパ節・血行性転移をきたします。抗がん剤治療が中心となります。

 

【病期分類】

原発腫瘍の進展度、リンパ節転移の有無、遠隔転移の有無で、0期、I期、II期、III期、IV期に分類されます。
さらにI、II、III期はA、Bの2つに分けられています。

 

【治療】

手術、抗がん剤、放射線治療、レーザー治療、ラジオ波焼灼療法、免疫療法などがあり、
がんの進行度によって治療法が変わります。

日本肺癌学会が標準治療を提示しており、当院でも基本的にこれに従って治療を行っておりますが、
最終的には患者さんや家族の方と相談の上治療方針を決めています。

 

【手術】

心機能・肺機能が低下している場合、高齢者、糖尿病・高血圧症などの合併症がある場合には手術ができない
場合があります。

タバコを吸っていると術後にさまざまな合併症が起こりやすくなります。
特に、術後に粘っこい痰がたくさん出て肺炎を起こしやすくなります。術前に禁煙していただけない場合には
以上の理由より手術はできません。

開胸の方法

標準開胸手術、胸骨正中切開、腋窩開胸、胸腔鏡下手術

肺の切除範囲

部分切除術、区域切除術、肺葉切除術、全摘術、合併切除術

リンパ節郭清

がんの広がっていく可能性のあるリンパ節を十分に切除します。 比較的早期の肺がんに対する手術は
胸腔鏡下手術が主流となってきており、当院でも2001 年より導入しております。

術後の痛みが軽い、出血量が少ない、手術創が小さいことなど利点の多い手術法です。
しかし、急な大出血に際しては早急な対応が出来ない場合があり、致死的になることがあります。
状況によっては通常の開胸を選択して、安全第一を心がけています。

内視鏡外科手術

良性の肺腫瘍や早期の肺がんを対象として、内視鏡手術を積極的に施行しています。
当科の手術は0.5~1.2cmの4つの傷で行い(場合により1ヶ所は3-6cmの傷の場合もあります)術後の疼痛も
わずかで回復も早いといわれます。

 

【化学療法(抗がん剤治療)】

いろいろな種類の抗がん剤が開発されており、一般には2種類以上の薬剤を組み合わせて投与されます。
以前より治療成績は向上し、再発が認められても長期の生存が望める場合もあります。

しかし、一般には根治は難しいことが多く、延命が中心となります。新聞などを賑わしております分子標的薬
「イレッサ」は一部の肺がんには大変有効で、長期間の生存が望める場合があります。

大変怖い合併症が報告されておりますが、慎重に経過を観察しておれば、まず心配はありません。
抗がん剤の副作用はいろいろありますが、抗がん剤の種類によって違いがあります。

脱毛は皆さんが最も気になさるものですが、必ず起こるものではなく、抗がん剤の種類によってはあまり見られない
ものもあります。担当医に詳しくお尋ねください。

 

【放射線治療】

切除不能な肺がん、手術前後の追加治療、腫瘍の進展や転移に伴う症状を和らげるために病巣に放射線を
当てておこなう治療です。

 

【レーザー治療(光線力学的治療法、レーザー焼灼)】

中心型早期肺がんに対しては、光感受性物質を体内に投与し、気管支鏡下にレーザーを照射します。
また、太い気管の中にできた腫瘍をレーザーで焼灼し、止血したり、空気が十分通るように内腔を確保します。

 

【病期別肺がん治療療】

1460

 

【非小細胞がんの病理病期別手術成績(5年生存率)】

1460-
JCOG肺がん外科グループ 1999年

 

 

自然気胸

【原因】

肺の表面にできたブラ(魚の浮き袋のような袋)が破れ、空気が肺の外へ漏れて、肺が縮む病気。
若くて体の華奢な人に多い病気です。

【症状】

咳、胸の痛み、息切れ、呼吸困難など

【診断】

胸部レントゲン、胸部CT

【治療】

安静にしておくだけで治る場合もありますが、ほとんどは何らかの治療が必要となります。
局所麻酔で胸の中へ細い管を入れて、漏れた空気を持続吸引するだけでよくなる場合があります。
しかし、空気の漏れが多い場合などは手術が必要となります。

現在は胸腔鏡下手術(胸に3ヶ所小さい切開を加 えて胸の中をビデオ画面で見ながらおこなう手術)で
ブラを切除する手術が主流となっています。術後数日で退院が可能です。