とどまることのない網膜硝子体手術の進化がもたらすもの ~倉敷成人病センターニュース No.34(2015年2月)

岡野内 俊雄当院の眼科は、いわゆる「眼底疾患」に特に専門性をもって診療にあたってきました。
ここ十数年での、この領域の疾患病態の解明と治療法の進歩は目覚ましいものがありました。実際に寄り添ってこなければ、この感覚は理解していただけないかもしれません。
近視眼底に生じ得る、これまで原因のはっきりしなかった視力低下に対する手術治療など、病態解明による治療法の確立、決め手となる治療手段のなかった疾患への治療の始まりと展開、難治性疾患の治癒率の向上、拡大する治療適応疾患と早期治療への移行など、検査機器と高い安全性を伴った治療法の登場と進歩があいまって大きな進展を遂げました。
治療法は、眼内を投与経路とする薬剤治療と手術治療が中心で、疾患や病態によりこれらを選択もしくは複合して治療します。
手術治療にあたるのが網膜硝子体手術です。眼球に開けたポート(孔)に器具を挿入し、顕微鏡下で眼内の様々な処置を行います。眼内を観察するための光学機器、眼内を照らす照明器具、硝子体を切除する手術装置は、この十数年で同調して革新されました。また、従来20ゲージ(≒1mm)のサイズが必要であったポートは、トロカーを使用した23ゲージ、25ゲージと縮小され、昨年末には、さらに27ゲージ(0.4mm)のシステムが汎用化されました(図1)。23,25,27ゲージでは結膜を切開しない極小の術創であるため、術終了時の創縫合の必要がなく、痛み、異物感等の術後の苦痛は劇的に軽減されました。手術時間も短縮されるため、患者さんの肉体的、精神的負担の軽減にもつながります。手術後の視力改善も早くなりました。また、挿入する器具も細くファインになることで、眼内の繊細な処置を低侵襲で行え、増殖糖尿病網膜症などの重篤な疾患の術後視機能向上につながりました。

当院では昨年390例の網膜硝子体手術を行いました。25ゲージシステムで行ってきましたが、12月以降多くの疾患で27ゲージでの手術に切り替えている現状にあります。
さらなるスモールゲージ化への移行は、最初、若干のストレスを術者に強いるのが正直なところです。
ですが、網膜硝子体手術の低侵襲化は、若干の術者の負担の見返りに患者さんに多大な恩恵をもたらしてくれます。
今後も「眼底疾患」において、最先端の診療、そして最善の治療を提供し続けたいと考えております。引き続き宜しくお願いいたします。

 

眼科部長  岡野内 俊雄
倉敷成人病センターニュース  No.34(2015年2月)