新たな家族の誕生を目指して ~倉敷成人病センターニュース No.36(2015年4月)

本山洋明体外受精センターの紹介をさせていただきます。

採卵による挙児目的の治療は生殖補助医療(英語略でART)と呼ばれており、体外受精、顕微受精、凍結胚移植の総称です。
1978年英国で最初の体外受精による女児が誕生し、37年目の現在までにその技術はめざましく進歩し、出生率が向上し、出生児の健常度は自然妊娠と同等であること、次世代を産生できることなどが明らかとなってきました。

日本では近年の晩婚化を背景に、早急な挙児をARTに求める症例が著増してきています。
2012年の全国ART出生児数は36,504人で同年全出生児数の3.5%、30人に一人を占めるまでになりました。

当院では1988年に体外受精、1992年に凍結胚移植、1993年に顕微授精での出産に成功し、2015年までに1,983人が出産し2,276人の児が誕生しました。
2014年は439回採卵し、287回の新鮮胚移植、331回の凍結胚移植を行ない158回の妊娠例を得ました。

ARTの成績は卵の加齢と強く関係し、当院の患者あたり挙児率は35歳未満で60%,35-39歳で40%ですが、ART症例の35%を占める40歳以上では10%に下降します。
ARTの実際は卵胞刺激ホルモンの在宅注射から始まります。6日前後の注射で卵胞直径20mmほどに発育したころhCGを注射します。それから36時間後には減数分裂が進み、染色体が半数体になり精子の受け入れが可能となります。その頃に経腟超音波下に20ゲージ針で卵胞を穿刺吸引すると、卵胞液の中に卵が見つかります。平均10個卵胞吸引し、8個の卵が得られます。体外受精、顕微授精ともに平均6個が受精し、受精胚は培養液中で分割し2日目で4細胞期、3日目で8細胞期、4日目の桑実胚から分割速度が加速し、5日目の胚盤胞では100前後の細胞数になります。平均2個が胚盤胞になります。1個を子宮に戻し(胚移植)、残りは凍結保存して後日の移植を待ちます。採卵後の受精から胚移植までの卵、精子、受精胚の取り扱い作業(媒精、顕微授精、培養液作成、培養管理、凍結保存、その他)、はすべてART技術の専門家である胚培養士が行っています。

わたしたちは、1個の卵細胞と1個の精子が共同してできた1個の受精胚から胚盤胞までの発育を観察評価しつつ胚に語りかけ激励し、新たな家族として誕生してもらえることを祈りながら子宮に戻しています。

 

クリニック院長、体外受精センター 本山洋明
倉敷成人病センターニュース No.36(2015年4月)