裂孔原生網膜剥離はボクシングや格闘技などの外傷によって生じることで知られていますが、ほとんどは普段の生活の中で突然起こる病気です。 初期症状は飛蚊症や、ピカピカと視野のどこかに光が見える光視症などがあります。

網膜剥離が生じると剥離した網膜に相応した部位の視野欠損が起こり、剥離部分が黄斑部と呼ばれる物を見るのに一番大切な中心部分に及べば、視力が低下します。

網膜剥離を生じてくる病態には大きく２種類あります。
一つは若年者に多いタイプです。網膜の周辺部に正常の組織と異なる変性巣があり、その中に萎縮に伴った小さな孔(円孔や裂孔）が形成されることで、その部位からゆっくりと平べったい網膜剥離が広がっていくパターンです。進行が緩やかなのと剥離の丈が低いため特徴により自覚症状に乏しいです。そのため、かなり進行した後に見つかることも多いです。

もう一つは中高年に多いタイプです。網膜に接着していた硝子体という組織が網膜からはずれてくる過程（年齢に伴う眼内の変化）で、網膜と硝子体との間に癒着の強い部分があると、剥がしていくセロテープに紙がひっついていくようにして網膜が破れ、その部分から網膜が剥がれてきます。

いずれのタイプであっても剥がれた網膜の機能は低下するため、手術によって網膜を元に戻す（復位させる）必要があります。眼球の外側にシリコンやスポンジのあて物を使用する方法（網膜復位術）と、眼内から網膜への牽引を除去していく方法（硝子体手術）があり、年齢、病態等を考慮して手術方法を選択します。硝子体手術は通常、眼内をガスに置換して手術を終了し、裂孔部位により異なりますが、術後に 「face down（顔を下に向ける）」などの体位をとります。