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角膜関連疾患(ドライアイ・感染性角膜炎・翼状片など)

角膜関連疾患_1


ドライアイ

涙の分泌量が不足したり、量は十分なのに涙の質の低下により涙がすぐに蒸発したりして、角膜が乾燥し、目の表面が傷ついたりする状態です。涙は油層、水層、ムチン層の3層から成っており、それぞれのバランスを保つことで涙の安定性を保っています。しかしこの涙の状態が不安定になることで、涙が蒸発しやすくなったり、眼表面に傷がつきやすくなったりします。日本では約800~2,200万人がドライアイであるといわれています。


原因
加齢による涙の分泌量の低下や質の低下、パソコンやスマートフォンなどのモニターを長時間見つめることによるまばたきの減少、コンタクトレンズの使用、エアコンの使用による室内の乾燥が主な原因となります。
また、血圧を下げる薬や向精神病薬、抗がん剤により涙の分泌が減ることが知られています。また点眼薬のなかには、涙の安定性を妨げたり、角膜表面に傷を生じやすい成分が含まれていることもあり、ドライアイの原因となることがあります。加齢によりまぶたの縁にあるマイボーム腺という脂を出す腺が詰まり、脂が出にくくなるマイボーム腺機能不全や、自己免疫疾患であるシェーグレン症候群が原因となることもあります。
症状
目の乾燥感、目の痛み、異物感、見えにくさ、目の疲れ、充血や目の熱感などのさまざまな不快な症状が出ます。
検査・診断
問診に加え、角膜表層を染色して細隙灯顕微鏡検査で傷の有無と涙液の状態を確認します。涙液分泌を調べるシルマー検査では、ろ紙をまぶたに挟んで5分間の濡れ具合を計測します。マイボーム腺が詰まったり炎症を起こしていないかについて、まぶたの縁を圧迫して脂の状態を確認したりします。
治療
症状が軽い場合は、ヒアルロン酸や人工涙液、ムチンや水分を分泌する点眼液などの点眼治療で症状の軽減を図ります。それだけでは不十分で、涙液分泌が減少している場合には、涙点に小さなシリコン性の詰め物をして涙液の出口を塞ぐ涙点プラグ治療が有効なこともあります。マイボーム腺が詰まったり、炎症を起こしている場合は、ベビーシャンプーなどでの眼瞼の清浄や目を温める温罨法、マクロライド系抗生物質の内服や点眼治療を考慮します。

予防・注意点
室内が乾燥していると目が乾きやすいので、加湿器などを使用したり、
 空調時間を制限したりする。
スマホやパソコンなどを使用するときは、目に近づけすぎないようにして
 モニターを目線より下に下げる。
まばたきの回数を増やすよう心掛ける。
湯舟に漬かったり、ホットアイマスクなどで目を温めるようにすることも有効です。

 



感染性角膜炎

角膜に病原体である微生物が感染して、炎症を引き起こした状態を感染性角膜炎といいます。角膜は5層に分かれた構造になっており、一番外側の角膜上皮は涙で保護されています。通常であれば細菌などの感染を防いでいますが、何らかの原因で角膜上皮に傷ができると病原体が付着して増殖しやすくなります。 炎症を起こす病原体によって細菌性角膜炎・真菌性角膜炎・アカントアメーバ角膜炎・ヘルペス性角膜炎などに分けられます。


原因

何らかの原因で角膜に傷がつき、その傷に細菌や真菌などの病原体が入り込むと炎症が起きます。細菌が感染すると細菌性角膜炎を発症し、植物の枝などで誤って目を突いてしまうと真菌性角膜炎を発症することがあります。

アカントアメーバ角膜炎はアカントアメーバが原因となる角膜感染症ですが、患者はソフトコンタクトレンズ使用者が多く、使い捨てコンタクトレンズを長く使用したり、レンズの保存液を交換しないなど、正しく取り扱わないことが原因となります。

症状
一般的な症状として、目の痛みやゴロゴロするような異物感、充血や流涙があります。角膜は透明で、物を見るときに非常に大切な役割を果たす場所なので、状態によっては視界がぼやけて視力が低下したり、光がまぶしく感じたりといった視力障害が出る場合もあります。細菌性角膜炎や真菌性角膜炎では目が強く痛んだり、大量に目やにが出ることが多く、角膜のある黒目が白く濁ったり、白目が充血する場合もあります。ヘルペス性角膜炎、真菌性角膜炎は体の免疫力が落ちていたり、目に持病があったりする場合に発症しやすいといわれています。また、コンタクトレンズ使用者で難治性の角膜炎ではアカントアメーバ角膜炎のことがあります。
検査・診断
問診と視診に加えて、細隙灯顕微鏡検査で観察して炎症の状態を確認します。また重症の場合には、感染した角膜部位の表面を擦って病原体を顕微鏡で調べたり培養検査をします。
治療
角膜炎の治療は感染した病原体の種類に応じて異なります。細菌性角膜炎の場合は、抗菌薬の点眼が基本となりますが、重症の場合は内服の抗菌薬を処方したり、入院して点滴治療を行うこともあります。細菌の種類によっては病気の進行が早い場合があり、治療せずに放置していると角膜が溶けてしまうこともあります。真菌はカビの一種のため、真菌性角膜炎ではカビに対して効き目のある抗真菌薬を点眼したり、内服や点滴を用いたりします。治療は1カ月以上の時間をかけて行い、回復するまで長い期間がかかることが多いです。アカントアメーバ角膜炎は特効薬がなく難治であるのですが、抗真菌薬の点眼・点滴、消毒液の点眼、角膜の表面を削るなどさまざまな治療を組み合わせて対応します。ヘルペス性角膜炎では、抗ウイルス薬の軟膏を塗って治療しますが、重症の場合は内服薬の使用や点滴も行います。
予防・注意点
感染した病原体の種類によっては症状の進行が早く、失明する可能性もある病気です。また、治癒した後も角膜に濁りが残って角膜移植が必要となることもあります。普段とは違う目の充血や痛み、眼脂などの症状がある場合には早めに眼科を受診することが大切です。また、コンタクトレンズでは使用方法を守り、長く使用したり不潔な状態にしないことが大切です。ゴミや異物が入りやすい場所で作業する場合は保護メガネをかけるなどの注意をしましょう。

感染性角膜炎_1


円錐角膜

円錐角膜は角膜中央が菲薄化し前方に突出してくる疾患です。進行すると強度の近視と不正乱視を生じる非炎症性、進行性の疾患です。思春期から20代までは進行することがあり、30代以降は進行が停止することが多いとされています。またアトピー性皮膚炎や目を擦る癖がある人に多いとされています。


原因
不明ですが、角膜実質のコラーゲンの異常などが推測されています。
症状
進行すると不正乱視のため眼鏡で矯正しても視力が出にくくなることで気づくことが多いです。急性角膜水腫といって、急に角膜に浮腫をきたして見えにくくなる場合があります。多くは圧迫眼帯などで自然に軽快しますが角膜に混濁を残します。
検査
視力検査・細隙灯顕微鏡検査・角膜形状解析で進行しているか確認します。
治療
治療の基本はハードコンタクトレンズ(HCL)での視力矯正と進行予防です。初期では通常のHCL装用で対処が可能ですが、進行すると突出した角膜に合わせて特殊ハードコンタクトレンズを処方する場合もあります。進行した重症の円錐角膜では全層角膜移植が必要になることがあります。


円錐角膜_1


翼状片

翼状片_1

原因
紫外線や慢性炎症により結膜下組織の増殖が起こるとされています。
症状
進行は比較的遅いですが、中心に向けて大きくなることで異物感を生じたり、乱視などが出ることで視機能が落ちる場合があります。
検査
角膜乱視測定や角膜形状解析を行い、乱視の程度や進行の具合を確認します。
治療

視機能に影響する場合は、翼状片を取り除いて結膜を用いた再発予防の手術を考慮します。若年ほど再発率が高いため注意が必要です。



アレルギー性角結膜炎

目の表面に花粉などのアレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)が付着して、結膜に炎症を起こす病気です。結膜とは瞼の裏側と白目の表面を覆っている粘膜です。通年性や季節性のアレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎に伴うものなどがあります。重症化すると、子供に多い春季カタルやコンタクトレンズ装用者に見られることの多い巨大乳頭結膜炎を生じます。


症状

目のかゆみや充血、異物感、目やにがでるなどの症状が出ます。

炎症が強いと眼瞼の裏の結膜にぶつぶつとした巨大乳頭状の隆起を生じたり、

それによる角膜障害が生じたりします。

治療

基本的には抗アレルギー点眼液で治療します。

重症のものでは、ステロイド剤点眼や免疫抑制剤の点眼で治療します。

予防・注意点
花粉やダニなどアレルゲンとなるものをなるべく避ける
季節性のものはかゆみが出る前から予防的に点眼を始める
擦るとかゆみが増幅されるのでなるべく擦らないなどの注意をしましょう。

アレルギー性角結膜炎_1




角膜変性症

角膜表層に混濁を生じる疾患ですが、比較的多いものに顆粒状角膜ジストロフィ、帯状角膜変性があります。


顆粒状角膜ジストロフィ

角膜の実質浅層から中層に顆粒状の混濁が沈着します。遺伝性(常染色体優性遺伝)の頻度が高いです。自覚症状がないことが多く、加齢と共に混濁がかなり蜜になるまで視力低下をきたさないことが多いです。混濁により視力低下したときは、治療的レーザー角膜切除治療(PTK)を考慮します。

帯状角膜変性

角膜中央部の角膜実質浅層にリン酸カルシウムが帯状に沈着する状態です。慢性腎不全など高カルシウム血症や眼表面の炎症が持続した場合などに見られます。視力低下している場合は、治療的レーザー角膜切除術(PTK)や薬剤による除去治療などを考慮します。


角膜変性症_1


涙点プラグとは

涙は涙腺から分泌され、眼表面を潤し、涙点という目頭の近くの眼の縁の上下の小さな穴から排出されます。
涙の10%は眼の表面から蒸発し、残りのほとんどは涙点から鼻涙管を通り、鼻に抜けていきます。
涙点プラグとは 涙点をふさぐ栓のことです。


涙点プラグ_1

ドライアイの点眼で自覚症状、眼の表面の傷が改善しないとき、次の治療として涙点プラグをおすすめしています。
診察室で点眼麻酔をした後に涙点プラグを挿入します。ほとんど痛みはなく、2、3分で終了します。
涙点プラグで涙点をふさぐと、眼表面に涙が貯まり潤されます。自覚症状、傷が改善する患者さんが多くいらっしゃいます。

涙点プラグを挿入すると、涙とともに老廃物や目やにも貯まりやすくなることがあります。
その際は、人工涙液を点眼して貯まったものを洗い流し、目を清潔に保ちます。
涙点プラグの材質としてはシリコン、液体コラーゲンがあります。




シリコン製プラグ

 【長所】涙をせき止める力が強い。
 【短所】自然脱落することがある。涙点に肉芽ができることがある。
     眼表面に当たり、違和感がでたり傷ができる可能性がある。


涙点プラグ_2涙点プラグ_3


液体コラーゲン製プラグ(キープティア)

注入時は液体、体温により温まるとゲル化して涙点を閉塞します。
持続期間は個人差がありますが1~2カ月。効果がなくなると再注入が必要です。

 【長所】違和感がほとんどない。
 【短所】涙をせき止める力が弱い。時間がたつと自然に溶けてなくなる。


涙点プラグ_4