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婦人科

倉敷成人病センター婦人科 MISトレーニングコース

2023/05/25

はじめに

MISトレーニングコース

1997年に当科の安藤正明が腹腔鏡手術を導入し、安藤の下で技術・知識を身に付けた婦人科医がオピニオンリーダーとして数多く全国に羽ばたいていきました。

 

その功績は大きく、MIS(minimally invasive surgery:低侵襲手術)は全国各地で広く普及し、もはや標準的な手術として近年行われています。その一方で、手術症例数や指導医の数・技術レベルは施設や地域によってもまちまちであり、MISのクオリティの均霑化にまでは至っておらず、同じMIS術者によってもまだまだ大きな差があるのが現状です。



そこでこの度、我々がこれまで培ってきた知識・技術をより多くの婦人科医に学んで頂けるよう、当科初となるMISトレーニングコースを開設させて頂く運びとなりました。


当科では、安藤が20年以上前から行なってきた倉敷成人病センター独自の手術スタイルを、将来を担う若手医師が余すところなく継承しつつ、ロボット手術のような新たなテクノロジーにも積極的に触れることができるような、より良い環境を心掛けています。そして何より、“とりあえずラパロができる、TLHができる”ではなく、世界に通用するトップレベルの技術を持った手術医の育成を目指しています。そのためには、若い頃の早い段階において、どのような環境下で学ぶかが最大の鍵であると我々は確信しています。







ベーシックコース

ドライボックストレーニングとTLH/RASH/LMを基礎とした、2年間で日本産科婦人科内視鏡学会(JSGOE)の腹腔鏡技術認定医を取得するカリキュラムです。ベーシックコースでは、手術の安全性とクオリティの担保を優先しつつも修練医が段階的にMISの技術を習得できるよう、指導医によるサポートの下で学んでいきます。技術認定医取得はあくまでも一つの目標・通過点であり、執刀医として将来的により高いレベルでの手術が出来るようになるためには、ベーシックコースの段階で凝固・切断/縫合・結紮/剥離・止血といった基礎的な技術・知識を確実に身に付けておくことが非常に重要です。

(腹腔鏡技術認定医と婦人科腫瘍専門医の両方の取得を目指す場合は、MISカリキュラム開始と同時に婦人科腫瘍医の修練を開始します。)


実際の手術以外にも、手術スキルを向上させるための様々な方法・姿勢を身に付けます。


トレーニング
当科は年間1,500件以上のMISを行っているハイボリュームセンターであり、時間のゆるす限り多くの手術を自分の目で直接見て学びます。
MISトレーニングコース③


ビデオ編集やプレゼンテーション能力の向上を目的として、カリキュラム1年目より国内学会へ参加、カリキュラム2年目は国際学会にも参加します。また、当院主催の各種MIS関連のセミナーに講師として参加します。
(参加費・交通費・宿泊費は病院負担です)


ドライボックストレーニング

  • ドライボックス・鉗子類は病院より提供します。(カメラ/モニターシステムは各自で購入してもらいます)
  • 各自のトレーニング内容は自由ですが、あらかじめ数ヶ月単位での目標を立てた上で計画的に行います。(指導医の下、規則的で意義のあるトレーニングの習慣を身に付けます)
  • ロボット手術の技術習得を目指す場合は、ダビンチのシミュレーターによるトレーニングを並行して行います。


 
  • TLH 
Step0  ~1M 手術セッティング、トロッカー挿入、基本カメラワーク
Step1
  • 1M~3M
上部靭帯処理
Step2 3M~ 骨盤腹膜縫合
Step3 6M~ 腟断端縫合・基靭帯縫合
Step4 9M~ 基靭帯切断
Step5 12M~

腟管切開、子宮回収

Step6 18M~

膀胱剥離、子宮動脈・尿管同定

(トレーニング開始より2年後にJSGOEの腹腔鏡技術認定医試験を受験します)


  • RASH
  • ・全ての修練医がMISトレーニングカリキュラム開始後、できるだけ早期にダビンチのアシスタントライセンスを取得します。

  • ・腹腔鏡手術だけでなくロボット手術の技術習得も目指す場合は、ロボット手術の助手の経験(step0)を積んで「日本ロボット外科学会国内B級ライセンス」取得後にコンソールサージョンライセンスを取得します。

 

Step0   手術セッティング、トロッカー挿入、子宮マニピュレーター操作(国内B級ライセンス取得まではstep0まで)
Step1 ~3M 上部靭帯処理
Step2 3M~ 骨盤腹膜縫合
Step3 6M~ 腟断端縫合・基靭帯縫合
Step4 9M~ 基靭帯切断
Step5 12M~

腟管切開、子宮回収

Step6 18M~

膀胱剥離、子宮動脈・尿管同定

 

 

  • LM 
Step1 3M~ 子宮前壁漿膜筋層縫合
Step2 6M~ 子宮切開・筋腫核出
Step3 9M~ 子宮後壁漿膜筋層縫合
Step4 12M~ 前壁筋層埋没縫合
Step5 18M~ 後壁筋層埋没縫合
 (筋腫の大きさや位置によっても変わります)

 



学習stepの進行度合いは各自の経験や技術レベルに応じて調整します。そして、stepごとにチェック項目を決めて簡易試験による評価を行います(指導医により技術だけでなく解剖などの知識的な評価も行います)。試験をパスできなかった場合は再試験を行い、試験をパスできるまで次のstepには進めません。

このように、ベーシックコースは患者さんに対する手術の安全性とクオリティの担保を優先しつつ、段階的にMISの技術を習得するためのカリキュラムです。技術認定医取得は飽くまでも一つの目標・通過点であり、執刀医として将来的により高いレベルでの手術が出来るようになるためには、凝固・切断/縫合・結紮/剥離・止血といった基礎的な技術・知識を確実に身に付けておくことが最も重要です。



アドバンスコース

KCTカンファレンス風景

ベーシックコースに引き続き、執刀医として下級医を指導しつつ、MISの真のエキスパートを目指すためのカリキュラムです。(腹腔鏡技術認定医であり、かつ症例選択を含めたリスクマネージメント等、MISの指導医としての技術・知識が十分に備わっていることが前提となります。)


※悪性腫瘍手術の執刀は腹腔鏡技術認定医と婦人科腫瘍専門医の両方の資格を有する術者のみとなります。

 

 

MISトレーニング④

MISトレーニング⑤

国内学会や国際学会はもちろん、当科がThe Thai- German Endoscopic TrainingCenter(TG-METセンター)と提携して行っているインターナショナルワークショップ(カダバートレーニング)へ参加することも可能です。
(参加費・交通費・宿泊費は病院負担)

 

 

Step1 24M 付属器手術(重症子宮内膜症以外)
骨盤リンパ節郭清(指導医と修練医で左右半分ずつ行います)
Step2 36M~ TLH、RASH(250g以下の癒着のない症例)、
LM(単発かつ7cm以下)
Step3 48M~ TLH、RASH(500g以下の癒着のない症例)、LM(多発、7cm以上)、
LSC、RSC
Step4 60M~ TLH、RASH(1000g以上)

深部子宮内膜症手術(ダグラス窩閉鎖に対するTLH含む)

悪性腫瘍手術(子宮体癌/子宮頸癌mRH)

Step5 84M~ 悪性腫瘍手術(子宮頸癌RH、傍大動脈リンパ節郭清)
Step6 120M~

稀少部位子宮内膜症手術(膀胱切除、尿管膀胱新吻合、直腸切除等)

子宮頸癌RT、卵巣癌手術、再発腫瘍切除など

 

 

ベーシックコースと同様に、学習stepは各自の経験や技術レベルに応じて調整します。アドバンスコースでは部長/副部長による総合評価で次のステップへと進みます。


おわりに

今回新たに設立したMISトレーニングコースは、内々的にこれまで当院で修練された先生方が受けてきた指導内容とほぼ同様のスケジュール内容です。現在では教育の低層化が進み、かなり早い段階から様々なMISを執刀できる機会が他の施設では沢山あると思いますので、我々のカリキュラムは一見遠回りのように感じられるかもしれませんが、当科の教育目標は世界に通用する真のエキスパートを育くむことであり、“何となくラパロができる、何となくTLHができる”手術医の育成ではありません。一つ一つのstepに長い期間をかけることで基本的な技術を確実に習得し、それをベースとして将来大きく飛躍できることをこれまでの経験から確信していますし、スタッフ全員がお互いにサポートし合いながら、同じ目標に向かって邁進していけるような環境だと思います。


応募者のMISの経験の有無は問いません。高い志こそが、最も重要な要素です。基本的にベーシックコースは2年間のトレーニングコースですが、ご要望に応じて短期での研修にも対応致します。既に腹腔鏡技術認定医をお持ちの先生で、自身の技術をより一層ブラッシュアップしたいと考えている先生や後期研修医の先生もお気軽に一度ご相談下さい。

我々の門戸はいつでも開かれておりますので、全国からの有志を心よりお待ちしております。

(本コースは卒後15年目以下の医師を対象とさせていただきます)

                                       


産婦人科スタッフ一同

 

連絡先窓口:倉敷成人病センター 医局秘書

お問い合わせ
e-mail : ikyoku@fkmc.or.jp