外来受付時間

午前8:30~11:30

午後13:30~16:30

面会時間
感染対策のため入院患者さんへの面会を制限しています。
休診日
土・日・祝日・年末年始(12/30~1/3)
※婦人科(予約のみ)と産科は、土曜日の午前中(祝日・年末年始を除く)も診療を行っています。

予約センターに電話する

呼吸器外科

手掌多汗症とは

2025/03/07

ひどい手汗に悩みながら体質だと諦めていませんか?
塗り薬や注射でも改善しない場合は、手術という選択肢も。



手掌(しゅしょう:手のひら)多汗症とは?その原因と症状

最近、テレビCM等でも目にされることもあるかと思いますが、「手掌多汗症」という病気があります。これは緊張すると手などに汗を多くかく、いわゆる精神性発汗による疾患です。
手から汗がポタポタ流れ落ちるほどひどい状態の患者さんもおり、多くは10代頃に症状が現れはじめ、学校生活に支障をきたしている場合もあります。
治療法があまり知られていないため、成人になっても手汗で困っている方が大勢いるとされ、原発性手掌多汗症(=原因のない手のひらの多汗症)の患者さんは19人に1人いると言われています。



手掌多汗症のレベル別症状・重症度評価

手のひらの発汗量は、時間帯や気温、緊張の程度によって変動しますが、目安としてレベル1〜3に分類されます。また、重症度の判定にはHDSS分類(多汗症疾患重症度評価度)を用い、スコア3・4が重症と定義されています。
症状がひどいと、常にタオルやハンカチが欠かせない、学校でノートやテスト用紙が濡れてしまい字がうまく書けない、パソコンのキーボードが打てない、スマートフォンの画面が濡れてしまう、人と握手するのが怖い、手が繋げないなど、日常生活に支障をきたすようになります。


レベル別症状HDSS分類


手掌多汗症の原因-交感神経の働き

手掌多汗症の原因は、胸部にある「交感神経」が過剰に働いていることにあります。自律神経の1つである交感神経は、脳から背骨の両側に沿って尾骨まで下りている神経を指します。
交感神経は体温調節や緊張時の身体反応をコントロールしており、通常は汗をかくことで体温を調節します。しかし手掌多汗症の場合、この制御が適切に行われず、交感神経が過剰に活性化し、手掌に必要以上の発汗を引き起こしてしまいます。この神経過剰反応は精神的な要因で起こりますが、これには遺伝性も指摘されています。



治療の必要性とタイミングの判断

手掌多汗症の治療を検討するタイミングは、症状が日常生活や精神的な負担となっているかどうかで判断する必要があります。特に、仕事や学業に支障をきたしたり、人間関係に悪影響を及ぼしていると感じる場合、早めに医師へ相談することをお勧めします。
治療を検討する際には、症状の重症度や患者さんのライフスタイルに応じた選択肢を提示します。まずは専門の医療機関で正確な診断を受け、必要に応じて具体的な対応策を医師と相談しましょう。




手掌多汗症治療の選択肢

塗り薬や注射による皮膚科での薬剤的治療が第一選択になりますが、それでも改善しない場合・短期間での治療を希望の場合は、呼吸器外科で手術を検討します。

治療を皮膚科で行う場合は、塩化アルミニウムなどの外用薬を塗ったり、ボツリヌス菌毒素を注射したりします。2023年6月に国内で初めて保険適用の塗り薬のアポハイドローション(一般名:オキシブチニン塩酸塩)が登場しました。


ただしこれらは症状を抑えることが目的で、効果は個人差があり、治療期間も長期にわたります。一方で手術による治療は効果が確実で、治療期間も短くて済むのがメリットです。




胸腔鏡手術で病的神経節を完全除去

胸腔鏡下胸部交感神経切除術(ETS)とは

手掌多汗症2

胸腔鏡下胸部交感神経切除術(ETS)は、胸部にある活動性の高い病的な交換神経節を切除する保険適用の手術です。手術には胸腔鏡と呼ばれる小型カメラを使用するため、傷跡が小さく目立たないのが特徴です。

当科では、全身麻酔をした後、両脇の下に3mmと5mmの穴を2つずつ開けて、細径胸腔鏡や手術器具を挿入します。そして肋骨の付け根付近にある交感神経節を同神経幹ごと切除します。

他の医療機関では神経を焼き切るだけのところもありますが、これだと再発のリスクもあるため、当科では病的な神経節を完全に取り除いています。その場合、3カ所の穴を開けることが多いのですが、当科では特に美容面を考慮して、3mmの細い胸腔鏡を使い、一側につき2カ所の穴(3mm・5mm)のみで手術します。

なお、発育に伴い症状が改善することがあるため、原則的に小学生以下の手術は実施していません。



当科でのETSのメリット

  • 術後すぐに手のひらの異常な発汗が止まる
  • 薬剤治療と異なり、効果が確実で永続的
  • 当科では神経幹の切断だけでなく神経節を取り除くため、再発のリスクが少ない
  • 細径胸腔鏡を使用し片側2カ所の穴で行うため、傷跡が目立たず、術後の痛みが非常に軽い
  • 呼吸器外科全般に通じた専門医と経験豊富な麻酔科医で手術を行うため、合併症のリスクが少ない
  • 入院期間は原則1泊2日と短期間で、社会生活への影響が少ない
  • 全室個室で部屋代無料のため、周囲を気にすることなく治療に専念できる



代償性発汗のリスク

手術の効果が大きい一方で、ETSの合併症として「代償性発汗」があります。
これは、手の汗が止まる代わりに、胸や背中、太ももなど他の部位で発汗が増加する現象です。ETSを受けた患者さんの約90%に何らかの代償性発汗が認められ、高頻度で発症する合併症であると報告されています。

代償性発汗の程度や発生する部位は個人差が大きく、軽度で日常生活にそれほど影響しないケースがほとんどですが、大量に汗をかき不快感や生活の質に影響を与えるケースもあります。
当科では代償性発汗の程度を減らす目的で切除神経節を1神経節に限局しておりますが、これでも完全に防ぐことは難しく、ETSの大きなデメリットといえます。

代償性発汗については、患者さんに事前に詳しく説明いたします。手術を決断する前に、自分自身が抱えている手汗の悩みと代償性発汗のリスクを十分に比較検討していただき、理解したうえで手術に臨むことが重要です。



監修医師-呼吸器外科主任部長のご紹介

呼吸器外科_奥村典仁

特任副院長
呼吸器外科 主任部長
学術顧問
奥村 典仁


当科主任部長の奥村医師は、手掌多汗症を含め胸腔鏡を使用した低侵襲の「完全鏡視下手術」を中心に高い実績を持っています。手汗でお悩みの方はお気軽にご相談ください。     


【予約センター】
086-422-2112
(受付 平日9:00~16:00)

 

メディア掲載