

午前8:30~11:30
午後13:30~16:30
脊椎は頚椎7個、胸椎12個、腰椎5個と骨盤の一部で構成されています。
脊椎は前方に椎体、後方に椎弓という骨があり、その中に脊柱管という管があります。脊柱管の中には神経が通り、その前後に後縦靭帯、黄色靭帯と呼ばれる靭帯があります。また、椎体と椎体の間に椎間板があります。脳からの命令は脊髄を通り、そこから枝分かれした神経によって手足に伝えられています。
加齢などの影響により、脊椎を構成する骨や靭帯が劣化し、椎間板の変性が進行すると、神経が圧迫されるため姿勢の維持が難しくなったり、慢性的な痛みや可動域の制限などの症状が現れます。これにより、歩行や立ち座りといった基本的な動作が困難になったり、長時間の同じ姿勢がつらくなるなど、日常生活にさまざまな支障をきたすようになります。
椎間板の辺縁の繊維輪が変性し、なかにある髄核が出てきて神経を圧迫する状態を指します。これにより、痛みやしびれなどが生じます。
主な原因は加齢による椎間板の劣化と言われており、他にもリスク要因として、姿勢の悪さ、遺伝的要因、肥満、喫煙、ストレスなどが挙げられます。
保存的治療を行っても改善しなかった重症患者さんを対象に、主に手術をはじめとした以下の治療を行っています。
頚椎椎間孔拡大術
(Foraminotomy)
頚椎の変形や加齢に伴う変性が進行することで脊柱管が狭まり、脊髄が圧迫されて生じる疾患です。
主な症状としては、手や指のしびれ、細かい作業が難しくなるなどの手指の巧緻性障害、歩行時のふらつきや足のもつれなどがあります。また、腕や肩の痛みを感じるケースもあります。
保存的治療を行っても改善しなかった重症患者さんを対象に、主に以下の手術を行っています。
神経の通り道である脊柱管が狭くなり、神経が圧迫される疾患です。脊椎が加齢により骨棘(こつきょく)という骨の棘ができたり、黄色靭帯が厚くなったり、椎間板が突出し神経圧迫をおこします。
特に高齢者に多く見られる疾患であり、加齢とともに発生率が上昇します。腰部脊柱管狭窄症は非常に一般的な腰の病気であり、高齢化社会の進展とともに患者数が増加しています。
約60〜80%の患者さんに間欠性跛行(はこう)という特徴的な症状が見られます。一定距離を歩くと足に痛みやしびれが生じ、脱力が強くなり、途中で休憩しないと歩けなくなる状態のことを指します。重度の場合は排尿・排便障害なども呈します。
保存的治療を行っても改善しなかった重症患者さんを対象に、主に以下の手術を行っています。
腰椎圧迫骨折とは、名前の通り、腰椎が圧迫されて潰れてしまう骨折のことです。この骨折は、特に椎体の前側が押しつぶされることで生じ、骨がくさび状に変形するのが特徴です。
原因には、転倒や尻もちをつくなどの外傷的な力の加わり、小さな衝撃であっても骨粗鬆症による骨の脆さが影響して骨折に至るケースが多いです。
女性は閉経後のホルモンバランスの変化で骨密度が低下しやすく、男性よりも発症リスクが高い傾向があります。
特に70歳以上の高齢者では骨密度は著しく低下するため、転倒や軽微な負荷(物を持ち上げるといった日常動作)でも発症する事例が増えています。高齢者の腰椎圧迫骨折は難治性となる場合もあり、適切な治療が重要となります。
当院では、従来の保存的治療では改善されにくい難治性の腰椎圧迫骨折に対して、BKP(バルーン椎体形成術)を実施しています。
BKPとは、損傷した椎体にバルーンを挿入して膨らませることで押し潰れた骨を回復させ、その後、医療用の骨セメントを注入して骨を安定化させる手術です。
腰椎圧迫骨折の多くは骨粗鬆症を伴う高齢者に発生するため、この手術は特に高齢者に向けて開発された最新の治療法です。高齢の患者さんは、通常の外科手術が体力的に厳しい場合がありますが、BKPは負担が少ないため、広い年齢層で安全に行うことができます。
手術は全身麻酔で行います。手術時間は通常30分前後と短く、体への負担が少ない術式です。
傷が小さく、手術時間が短い(およそ30分以内)ため高齢者にも安全
即効性があり、痛みが大幅に軽減される
入院期間が短く、早期の社会復帰が可能
BKPは比較的安全性の高い治療法ですが、合併症やリスクはゼロではありません。
具体的には、骨セメントを椎体に注入する際に、セメントが周囲の血管や脊柱管内に漏れ出てしまい、神経損傷や血管閉塞を引き起こすことがあります。また、術後数カ月以内に、隣接する椎体で新たな圧迫骨折が発生するケースも報告されています。
また、骨粗鬆症が重度で骨密度が極端に低い場合や全身状態が不安定な患者さんには手術がリスクになる場合もあるため、慎重に判断する必要があります。
整形外科 非常勤医師(岡山大学)
小田 孔明