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2025/06/06
肺がんは、“たばこを吸う人がかかるがん”と思われがちですが、現在罹患者が増えている肺がんは、“たばこを吸わない人でもかかる”可能性があることをご存じですか?
たばこを吸う人は減っていますが、肺がんは増加しており、日本人のがんで最も亡くなる方が多いがんです。
肺がんは大きく4つの種類に分けられます。
喫煙との関連が大きい「扁平(へんぺい)上皮がん」は減少傾向にある一方、肺がん全体の約60%を占める「腺がん」は、喫煙とは関係なくかかり、増加傾向にあります。
扁平上皮がんは、咳が出たり、痰に血液が混ざったりすることで見つかることがあります。一方、腺がんは、肺の外側の末梢部分にできることが多く、初期ではほとんどの人に自覚症状がありません。
種類 | 割合 | 特徴 |
---|---|---|
腺がん | 約60% | 喫煙とは関係なく罹患 症状が出にくい |
扁平上皮がん | 約25% | 喫煙との関連が大きい |
小細胞がん | 約15% | 喫煙との関連が大きい 増殖が速い、転移しやすい |
大細胞がん | わずか | 増殖が速い 手術して分かることが多い |
肺がんのステージと生存率を見ると、早期であるⅠ期では、5年生存率が8割以上であることが分かります。Ⅱ期、Ⅲ期…となると、5年生存率が極端に下がるため、早期発見が重要ということが分かります。
肺がんの5年生存率(2014~2015年)
Ⅰ期 | Ⅱ期 | Ⅲ期 | Ⅳ期 |
81.5% | 51.0% | 28.6% | 8.0% |
初期の肺がんの発見に最も有効なのがCT(コンピューター断層撮影)検査です。
CT検査なら、レントゲン検査では写らない小さながんや、心臓などの臓器の裏側、骨に隠れた部分を撮影することができるからです。特に自覚症状などなくても、年1回はCT検査を受けることをおすすめします。
肺がんは「非小細胞肺がん」と「小細胞肺がん」の2つに分けることができ、種類とステージによって治療が異なります。
「非小細胞肺がん」と称される腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんなどは、肺がん全体の8割以上を占め、これらの治療はⅠ〜Ⅲ期では手術適用となります。
2割以下の「小細胞肺がん」は、進行が早いため手術を行うのはⅠ期のみです。薬に反応しやすい特徴があり、Ⅱ期以降では薬物療法と放射線治療を行います。
非小細胞肺がん (腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんなど) |
小細胞肺がん | ||
---|---|---|---|
Ⅰ期・Ⅱ期 | 手術、(±)薬物療法 | Ⅰ期 | 手術+薬物療法 |
Ⅲ期 | 手術、薬物療法、放射線治療 | Ⅱ期・Ⅲ期 | 薬物療法+放射線治療 |
Ⅳ期 | 薬物療法 | Ⅳ期 | 薬物療法 |
肺の構造は、右肺は3つの肺葉、左肺は2つの肺葉からなります。
従来は、がんが小さくても肺葉ごと切除するのが標準手術でした。しかし現在、小型肺がんでは、機能温存のために肺の区画に合わせて切除する「区域切除」や、さらに小さく病巣付近だけを取る「部分切除」が増えています。
これらの縮小手術は最近では、複数の小さな穴を空けて行う胸腔鏡下手術で行います。体への負担が少なく、社会復帰が早いメリットがあります。
当科での胸腔鏡下手術は、ダビンチを使ったロボット支援下手術が主体です。
ロボット支援下手術は、ライセンスを持った術者がロボット操作を行いながら、さまざまな角度に曲がる4つのアームで手術が行えるため、細かい作業がしやすく、人の手を入れるより多様な方向からアプローチできるなどのメリットがあります。
手術時間は、通常の胸腔鏡下手術よりも若干時間がかかりますが、傷跡が小さいため身体の回復が早く、退院までの期間が短くなっている印象があります。
Ⅱ期・Ⅲ期では、呼吸器内科・放射線治療科と協力して薬物療法・放射線治療と組み合わせ、根治を目指した手術に積極的に取り組んでいます。
特任副院長
呼吸器外科 主任部長
学術顧問
奥村 典仁
当科主任部長の奥村医師は、肺がんを含め胸腔鏡を使用した低侵襲の「完全鏡視下手術」を中心に高い実績を持っています。肺がんをはじめ、呼吸器疾患の疑い、不安のある方はお気軽にご相談ください。