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外科

すい神経内分泌腫瘍

膵神経内分泌腫瘍 Pancreatic-Neuroendocrine tumor; P-NET

人体に広く分布する神経内分泌細胞由来の腫瘍で、膵・消化管など全身の様々な臓器にできます。膵臓には、インスリンやガストリンなどのホルモンを分泌する内分泌細胞(ランゲルハンス細胞)が存在しておりランゲルハンス細胞が腫瘍化したものが膵神経内分泌腫瘍です。
インスリンやガストリンなどのホルモンを過剰に分泌して症状を有する機能性腫瘍とホルモンを分泌しない非機能性腫瘍に分類されます。また細胞の分化度によって高分化型の神経内分泌腫瘍と低分化型の神経内分泌癌に分類されます。 この病気は多発性内分泌腫瘍1型(MEN-1)やフォン・ヒッペル・リンドウ病など遺伝性疾患を背景としているものがあります。


膵神経内分泌腫瘍

1.腫瘍の分類

●機能性による分類
 非機能性膵内分泌腫瘍
 機能性内分泌腫瘍
   インスリノーマ
   ガストリノーマ
   グルカゴノーマ
   VIPoma

●分化度による分類
膵神経内分泌腫瘍

2.症状

機能性腫瘍の場合は特有な症状(低血糖、意識消失、下痢、潰瘍など)で診断されることが多いですが、非機能性腫瘍は偶然画像検査で診断されたり、大きくなって診断されることがあります。

  • インスリノーマ:低血糖症状(ふらつき、冷汗、意識消失など)
  • ガストリノーマ:難治性の胃・十二指腸潰瘍、下痢、脂肪便
  • グルカゴノーマ:耐糖能異常、皮膚の紅潮
  • VIPoma(血管作動性腸管ペプチド):ひどい下痢
  • ソマトスタチノーマ:体重減少、腹痛、糖尿病、胆石症、脂肪便、下痢、貧血
MEN-1:
膵神経内分泌腫瘍以外に、1)副甲状腺腫瘍(機能亢進症)による高カルシウム血症による尿路結石や腎機能障害、骨量の低下や骨折、2)下垂体腫瘍による頭痛や視神経の圧迫による症状などを示すことがあります。
フォン・ヒッペル・リンドウ病:
副腎腫瘍(褐色細胞腫)による高血圧、中枢神経血管芽腫、腎臓癌などの腫瘍を認めることがあります。

3.検査

血液検査による膵臓ホルモン値の測定、電解質異常の有無、腫瘍マーカー(NSE)の測定などを行ないます。また血流が豊富なことが多く、腹部造影CT検査やMRI検査では早期に濃染される腫瘍として描出されます。近年ではPET-CT検査やオクトレスキャン(ソマトスタチンレセプターRI検査)などで腫瘍の悪性度や遠隔転移の有無を判断します。
腫瘍の診断が困難な場合は、超音波内視鏡検査(EUS)で針生検を行ない組織・細胞検査で確定診断を行うこともあります。機能性腫瘍で多発が疑われる場合は、選択的動脈内刺激物注入試験(SASI test)を行ない、腫瘍部位の同定を行ないます。

4.治療

腫瘍の進行度と患者さんの全身状態により適切な治療が必要です。膵内に限局している場合には、外科的切除が根治的治療となります。

1) 外科的切除

膵切除(膵頭十二指腸切除、膵体尾部切除、核出術、膵全摘術)を腫瘍の部位や進行度によって選択します。インスリノーマや2cm以下の非機能性P-NETでは縮小手術が選択されることもあります。



  1. 非機能性:局在やリンパ節転移のリスクを考慮して、核出術(+リンパ節サンプリング)やリンパ節郭清を伴う膵切除術
    1cm未満:経過観察を選択しても良い。
    2cm未満:条件により経過観察可能。ただしリンパ節転移のリスクあり。リンパ節郭清を伴う膵切除が原則。
    2cm以上:リンパ節郭清を伴う膵切除。
  2. インスノーマ:手術による根治が期待できる。主膵管損傷をきたさず安全に施行できるのであれば核出術が推奨される。腫瘍被膜を持ち浸潤傾向がなければ脾動静脈温存手術が推奨。多発、膵管拡張、浸潤、リンパ節転移を認める場合はリンパ節郭清を伴う膵切除。(インスリノーマは術前のSASIテストによる局在診断が必要)
  3. ガストリノーマ:ガストリノーマトライアングルと言われる十二指腸、膵の両方から発生し、切除によってのみ根治できる。ガストリノーマはその60~90%が転移する。リンパ節郭清は必須。
  4. グルカゴノーマ、VIPoma、ソマトスタチノーマなど他の神経内分泌腫瘍:一般的に予後不良。術前診断で治癒切除可能と判断された場合は外科切除が推奨される。
  5. NET G3, NEC:NET G3はG1, G2に準じて肉眼的に切除可能であれば切除。NECは極めて予後不良。切除の適応は不明。
  6. 同時性遠隔転移を伴う症例:切除可能病変に関しては切除を中心とした集学的治療。

2) 抗がん剤治療・分子標的薬

ソマトスタチンアナログ(オクトレチドやランレオチド)はホルモン産生による症状を改善したり腫瘍増殖を抑制したりすることが示されています。また分子標的薬のエベロリムスやスニチニブでは予後延長効果が証明されています。
また神経内分泌癌(NEC)などに対しては小細胞肺癌の化学療法に準じた抗がん剤治療などが用いられています。ただ神経内分泌癌(NEC)は予後が悪く、治療法は発展途中にあります。