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膵臓がんは症状が出にくいと聞いたことはありませんか?
これは膵臓が胃の裏側という体の奥深くにあり、自覚症状が出にくいためです。がんが小さいうちはほぼ症状がなく、進行して初めて自覚症状が現れることがほとんどです。
主な症状としては、腹痛、背中の痛み、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、体重減少、食欲不振、急な糖尿病の発症や悪化などが挙げられます。
これらの症状は他の疾患でも起こり得るため、膵臓がん特有のものと認識されにくいことも、発見が遅れる一因です。
膵臓がんの多くは膵管の細胞から発生する「膵管腺がん」であり、その特徴として、周囲に広がりやすい浸潤性の高さと、早期からリンパ節や肝臓など他の臓器へ転移しやすい性質が挙げられます。
このため、診断時には手術が不可能な進行状態で発見されることが少なくありません。他のがんと比較しても予後が不良な難治性のがんとして知られています。

これらのことから、膵臓がんを見つけるには検診が欠かせません。血液検査やレントゲンだけでは発見することが難しいため、超音波検査、造影剤を用いたCT検査、MRI検査を受ける必要があります。
膵臓がんの危険因子には、表にあるような項目が挙げられます。特に「膵臓がんの血縁者がいる」「糖尿病」「慢性膵炎」「膵のう胞」に該当する方は、リスクの増加率が高いため積極的に検診を受けましょう。

膵臓がんに対する治療法は、放射線・抗がん剤・手術など多岐にわたります。近年、使用できる抗がん剤の種類が増えたこともあり、治療の選択肢は広がりました。ただし、抗がん剤のみではなかなか根治することはできません。
膵臓がんには、他のがんと比べて一つの特徴があります。それは、膵臓がんの周りや内部にまで硬い“すじ”が張り巡らされていることです。そのため、物理的に抗がん剤が届きにくくなっているため、抗がん剤だけでは根治することは困難です。それだけでなく、この“すじ”はがんを排除する免疫細胞の侵入も阻むため、免疫細胞がうまく働かないことも根治を難しくしています。膵臓がんの根治のためには、さまざまな治療方法を組み合わせて集学的に治療を行う必要があります。
膵臓がんは手術前の検査で想定していた範囲より広がっている場合があります。そのため、がん近くの組織を一緒に取る「完全切除」が重要になります。切除する組織は脂肪のこともあれば、神経や血管のこともあります。
手術には、「膵頭十二指腸切除術」と「膵体尾部切除術」の大きく二つがあります。そのアプローチ方法には、開腹・腹腔鏡・ロボット支援手術があります。
手術中の出血は免疫力低下に関わり、術後の再発リスクを高めるとされています。当院ではどの手術であっても、出血量の少ない手術が重要と考え、「出血量を最少化した膵臓がんの完全切除」を行っています。
膵臓がんの中には、切除不能に分類される局所進行膵がんがあります。周囲の血管や神経を巻き込んでいるため、完全切除は難しいと考えられてきました。しかし、これに対して、抗がん剤を半年以上投与し、がんが縮小したところで切除する「コンバージョン手術」が行われています。実際、長期間の抗がん剤を乗り越え、膵臓がんを完全切除できた患者さんの中には、再発なく生存されている方もいます。
膵臓がんに対するロボット支援手術は、複雑で繊細な操作を高精度に行うことを可能にし、手術の安全性と根治性の向上に大きく寄与します。当院でも、膵臓領域でのロボット支援手術を実施しており、より安全で質の高い外科治療の提供が可能となっています。

ロボット支援手術は、腹腔鏡下手術の低侵襲性を有しながら、さらに精密な操作が可能な点が特長です。
腹腔鏡下手術は、腹部に小さな穴を開け、内視鏡カメラや手術器具を挿入して行う低侵襲手術ですが、器具の動きが直線的で操作の自由度が低く、2次元映像のため奥行きを把握しにくいという課題がありました。
ロボット支援手術では、高画質な3D映像で患部を拡大しながら、人間の手首以上の可動域を持つロボットアームを操作することができ、より複雑な手術への対応が可能となっています。
小さな傷で済むこと、出血量が少ないこと、術後の癒着が少ないことが、ロボット支援手術の代表的なメリットです。また、膵臓がん手術では、開腹や腹腔鏡と比べて、ロボット支援手術の方が重症合併症の発生率が低いことが報告されています。例えば、膵頭十二指腸切除術における膵液漏のリスク軽減や、膵体尾部切除術における脾臓温存率の向上が挙げられます。
※ただし、血管への浸潤や遠隔転移の状況など、がんの進行度によってはロボット支援手術が困難な場合もあります。
当院では膵臓腫瘍の精密検査だけではなく、早期~進行期の膵臓がんへの積極的な治療を行っています。膵臓がんの検診に興味がある方、膵臓に腫瘍や異常を指摘された方は当院までご相談ください。

外科 医長
梶岡 裕紀