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放射線技術科

X線検査による被ばくについて

2021/05/13

当院では『電離放射線への被ばくを管理・制御することによって、確定的影響を防止し、確率的影響のリスクを合理的に達成可能な程度に低減すること』(ICRP[国際放射線防護委員会]の勧告)を守り、放射線科医の管理のもと、診断に影響のない範囲で放射線被ばくが少なくなるように適切な放射線量で、安全に検査を行なっています。

X線検査による体への影響はありますか?
体への影響は『確定的影響』と『確率的影響』が考えられます。しかし、X線検査の放射線被ばくは少量なので、心配ありません。

確定的影響
●確定的影響(組織反応)
放射線の被ばく量が「しきい値(感受性の高い1%に影響が出始める量)」を超えると発生する影響で、「しきい値」を越えなければ影響は発生しません。脱毛、皮膚障害、下痢、不妊などの症状があり、最も低いしきい値は男性の一時不妊(150mGy)です。X線検査の被ばく線量は100mSv未満であり、確定的影響は発現しません(※ X線検査は低LET放射線なので mGy = mSv で差し支えありません)
確率的影響
●確率的影響
どんなに少ない被ばく線量でも影響の可能性はあるとする考えで、発がんと遺伝的影響が該当します。
遺伝的影響は高線量照射による動物実験では認められますが、ヒトの疫学調査では放射線によって遺伝的影響が増加したという報告はありません。
発がんは100~1000mSvでは被ばく線量に伴い、影響の確率が比例して上がり、1000mSvの被ばく線量でがん死亡率は約5%増加しますが、100mSv以下のがん死亡率の増加は統計学的に立証困難で実証されていません。しかし安全側に考慮し比例関係が続くと考えられ、100mSv以下の被ばく線量でも影響の確率は上がるかもしれないと考えられています。


当院のX線検査は部位や体厚、方法によって多少変わりますが、胸部レントゲン撮影は0.06mSv、CTは5~30mSv程度です。
また、『X線検査によるおおよその被ばく線量と生涯がんリスク』を下記します。X線検査による被ばく線量は100mSv以下なので、リスクがわからないくらい体への影響は小さいと考えられています。


がんリスクは安全側(リスク多め)に考慮されています

※がんリスクは安全側(リスク多め)に考慮されています。

●個人のリスクの計算は困難です
ICRPの総括で、実効線量は放射線防護の判断基準(標準的な人を対象)であり、個人被ばくに対するリスクの特定や、微量の被ばく集団に対するがん死亡数の計算で使用すべきでないとしています。汚染地域から非難させるか、除染しながら生活することが許容できるか等の判断基準とするものです。放射線感受性は年齢差、体格、男女差(特に乳腺)等があり、特定の人の被ばくリスクを正確に算出することは困難と考えられています。
毎月、X線検査を受けています。心配です。
X線検査による被ばくは少量なので、積算する必要ありません。心配ないです。
確かに、がんになるリスクは計算上では上昇することになると考えられています(安全側の考慮)。
もちろん、大線量を一度に被ばくすると有害なので、少ない線量でも不必要な被ばくは避けますが、100mSv以下では放射線の影響を積算で考慮する必要はないというICRPの勧告があります※1。
そもそも、地球上の生物は自然放射線を世界平均で2.4mSv/年、日本平均で2.1mSv/年浴びています。
高いところはインド・ケララで3.8mSv/年です。低線量の放射線による細胞損傷は修復されます。自然放射線でがんになる人はいません。
しかし、完全に安全な検査と言い切れないのも確かです。なので、医師は被ばくのリスクと検査による患者さんのメリットを考慮して検査を薦めています。安心して検査を受けてください。不安なことは医師や検査スタッフにお申し出ください。
また、患者さんご自身の判断により内緒で病院を変えて何度も同じ検査を受ける事は、メリットがデメリットを下回ると考えられます。

※1:『医療被ばく相談』2018年10月発行 編著:日本診療放射線技師会・医療被ばく安全管理委員会
これから妊娠したいのに、卵管造影で卵巣が被ばくするなんて不安です。
吸収線量のしきい値
妊娠前に卵巣が被ばくすると子どもに悪影響がないか不安ですよね。
妊娠前の被ばくについて、『両親のいずれかの生殖腺への受胎前照射によって、子どもにがんあるいは奇形が増加するという結果は示されていない。にも関わらず、何人かの研究者は卵巣に500mGy以上被ばくした場合、妊娠を2カ月遅らせることを勧告している。※2』とあります。
一般的に卵管造影検査による卵巣の被ばく線量は約2mSvと言われています。X線検査による被ばくは少量なので、心配いりません。

※2:ICRP Publ.84,2000
妊娠中の被ばくは大丈夫ですか?子どもに悪影響はありますか?

一般的に大人より胎児の方が放射線感受性は高いと言われているので、妊娠中に胎児が被ばくしたかと思うと心配になると思います。
胎児は被ばくする時期により発生する異常(先天異常)が異なります。100mGy未満の被ばくでは下表の先天異常は発現しません。

先天異常

胎児の被ばくについて、『100mGyにおける放射線誘発の小児がん・白血病の生涯リスクは安全側の推定値で約1/170(0.59%)です。医療被ばくのない場合のがん罹患の生涯リスクは約1/3人(33%)であり、致死がんのリスクは約1/5人(20%)です。』とあるように、放射線誘発の発がんリスクは自然発生率に比べ桁違いに低いので、『100mGy未満の胎児線量では、放射線被ばくのために妊娠中絶をする医学的な正当性はない※3』と明記されています。
X線検査は必要な部分だけを照射しているので、胸部X線撮影による胎児の被ばくは0.01mGy未満(測定困難レベル)です。一般的な検査別の胎児被ばく線量を下記します。

※3:ICRP Publ.84,2000

検査別の胎児被ばく線量一般的な検査別の胎児被ばく線量2

また、放射線に被ばくしないでも、すべての動物にとって先天異常は生じてしまいます。新生児期に診断される先天異常は、心臓・腎・脊椎などを含めると5%以上といわれています。また、小児がんと白血病は0~15歳の自然発生率は0.2~0.3%です※4。

※4:ICRP Publ.84,2000

『胎児の被ばく線量と健康な子どもが生まれる確率』を下記します。

胎児の被ばく線量と健康な子どもが生まれる確率
でも、『妊娠の疑いのある人はお申し出ください』と書いていました。矛盾していませんか?
X線検査は完全に安全な検査と言い切れないので、超音波などで同等な結果が得られるなら、検査方法の見直しが検討されます。
X線検査を受けた後に出産し、仮に小児がんになった場合、「あ~、あの時のX線被ばくが原因だ」と後悔しないためにも、申し出ていただきたいのです。
実際には他のリスク因子(喫煙・高血圧など)があるため、被ばくが直接的な原因とは実証困難です。


【参考資料】
・ICRP[国際放射線防護委員会]の勧告
・環境省HP 『放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料』
・国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構
・岡山放射線技師会 岡放技ニュース
・日本産婦人科医会報
・『医療被ばく相談』2018年10月発行 編著:日本診療放射線技師会・医療被ばく安全管理委員会
・総務省統計局
・国立がん研究センター