午前8:30~11:30
午後13:30~16:30
2020/08/28
現在、日本における乳がん患者は女性がん罹患率では最も高い割合を占めており、10人に一人がかかると言われています。 一方で乳がんに対する研究も急速に進歩し、乳がんを早期に発見して治療した場合 (ステージ0、ステージ1)、5年生存率はおよそ99.7%に達するなど、高い根治性も期待できます。
データから見ても分かるとおり、乳がんは発見が早いほど、治療の選択の幅も広がり、その後の生活や生き方にも大きく影響してきます。
当院では、2020年7月に乳腺科として乳腺専門医が新たに着任し、乳腺疾患の患者さんのニーズに 応えるべくブレストセンターを開設いたしました。
ブレストセンターでは、乳腺科、乳腺外科、放射線科、病理診断科、乳がん看護認定看護師、がん薬物療法認定薬剤師、放射線技師、管理栄養士などの各分野の専門家が協力し、総合力をいかしたチーム医療のもと、質の高い乳がん治療を行なっています。
当院は、岡山県が指定する乳がん精密検診機関に指定されており、毎日外来診療を行なっております。
対象は、乳房にしこりや痛みを感じている方、健康診断や人間ドックで精密検査を進められた方です。
マンモグラフィ検査や超音波検査(乳腺エコー)などは、女性の検査技師が対応していますので、安心して検査を受けていただけます。 また、乳がん治療はからだの治療だけでなく、心の治療も大切です。経験豊富な 乳がん看護認定看護師が複雑な治療を自己決定することの手助けをはじめ、 リンパ浮腫予防のためのセルフケア方法や、抗がん剤や内分泌治療の副作用への対処方法に 関するアドバイス等、乳がんに関するさまざまなケアに積極的に取り組んでいます。
乳がんは欧米先進国のほとんどの国で、女性のがん罹患率・死亡率の第一位を占めています。
日本では欧米にくらべると1/4~1/5と少なかったのですが、現在急速に増加して、1990年には年間2万3千人でしたが、2000年には3万人を超え、胃がんを抜いて女性のがん罹患率の第一位になりました。
※右記のグラフをクリックすると拡大図をご覧いただけます。
おおよそ日本人女性の約40人に1人ほどの割合で乳がんが発生していることになります。 年齢別にみると特に40歳後半から50歳代に多く発生し、更に現在この年代を含めて高齢者の乳がんが増えています。
罹患率の上昇にともなって、乳がんによって亡くなる人も増え、2000年には約1万人の方が乳がんによって死亡したと推定されています。
しかし、世界に眼を転じてみると欧米の乳がん先進国の中では、乳がんの罹患率は減っていませんが、乳がんによる死亡率が減少してきている国があります。
右のグラフではスウェーデン、カナダなどが死亡率が減少している国としてあげられます。別の報告では、イギリスやアメリカでも乳がんの死亡率が低下しているデータもあります。
これには、質の高い乳がん検診による早期乳がんの発見が大きく寄与していると言われています。
すなわちマンモグラフィや乳腺超音波検査といった画像を用いた乳がん検診です。欧米ではマンモグラフィによる乳がん検診が早期乳がん発見に大きな役割を果たしており、日本でもマンモグラフィ精度管理中央委員会の管理のもとに質の高いマンモグラフィ検診が軌道にのりつつあります。
また、日本人女性の乳腺の性質上マンモグラフィでは発見のむずかしいタイプの早期乳がんを発見するのに適した乳腺超音波検査も乳がん検診に導入しようと検討されています。
※右記のグラフをクリックすると拡大図をご覧いただけます。
乳がんになる原因はまだあまりわかっていません。でも、女性ホルモンとの関係が大きいことはわかっており、今まで乳がんになった人たちの年齢や生活習慣などを調べることによって、女性ホルモン環境に影響を及ぼすいくつかの傾向が指摘されています。
それをまとめたものが「乳がんのリスクファクター」です。
食生活が欧米化したため栄養状態がよく成長が早くなってきて、日本人女性の初潮は早くなり、閉経が遅くなってきました。
つまり、生理のある期間すなわち女性ホルモンの活動する期間が長くなったことで、乳がんが多くなったと考えられています。
また、脂肪組織にはコレステロールから女性ホルモンを合成する酵素があります。肥満だと脂肪量が多いため女性ホルモンも多く作られ、乳がんの発生の可能性も高くなるということです。
特に、閉経後の乳がんの発症と関係が大きいといわれています。また、女性の社会進出により、女性のライフスタイルも変化してきました。
大都市圏に乳がんが多い、仕事を持った女性や高学歴の女性に乳がんが多いといわれていますが、妊娠未経験者や初産年齢が高いと女性ホルモンの活動する期間が長くなるためと説明されています。
また、同様に体質や生活環境が似ているという点で、お母さんや伯母さん、姉妹などの中に乳がんにかかっている人がある場合は、自分も乳がんにかかりやすいし、一度乳がんにかかった場合反対側の乳房に乳がんが発生する危険も高いのです。
乳がんの自己検診は毎月1回定期的に行ないましょう。
乳房の痛み・張り感・緊張感が最も軽くなる生理の終わった頃にゆっくりと入浴する時などに行うとよいでしょう。
閉経された方は、覚えやすいように「毎月1日の日に」などと決めて行ないましょう。
いろいろな姿勢でいろいろな角度で観察します。
(前から、横から、斜めから、腕を上げたり下げたり、腕を腰に当てたり、腕を上げたまま前かがみになって観察します)
入浴時、手に石鹸をつけて軽くなでてみましょう。
指をそろえ、指の腹でなでてみます。
腕を下ろした状態で、腕を上げた状態で、前から、横から。
乳房を持ち上げて、下側からも同じようにして調べます。
そして、軽く乳首をつまんで乳をしぼるようにしてみましょう。
あおむけになり検査をする側の腕の下にまくらを入れ、乳房を平らにします。
反対側の腕の指先で、入浴時と同じようにさわります。
乳房は脂肪と乳腺とから成り立っており、乳腺は、軸を乳頭に差して脂肪の中に浮かんだぶどうのような構造をしています。
1個1個のぶどうの粒がミルクを作る小葉で、ぶどうの粒(小葉)の集まったぶどうの房が腺葉です。
乳房の中には12~15房のぶどう(腺葉)がはいっており、それぞれのぶどうの粒で作られたミルクを乳管という茎を通して軸に集めて乳頭から分泌します。
乳管は、枝分かれを繰り返すたびに細くなり、最後は終末乳管となって小葉の中に入って終わります。
この終末乳管と小葉とを合わせて終末乳管小葉単位(TDLU)と言い、ほとんどの乳がんはここに発生します。
多くは乳管の中に発生した乳がんで『乳管がん』と言います。
まれにミルクを作る細胞の集まりである小葉から発生する乳がんもあり『小葉がん』と言いますが、これがいま徐々に増えてきています。
※右図をクリックすると拡大図をご覧いただけます。
乳がんの細胞は、乳管というトンネルの壁を作っている細胞、乳管上皮細胞から発生し、トンネルの中で分裂し増えていきます。
トンネルの中で一杯になった乳がん細胞がさらに増えるとトンネルの壁を破って外にとび出していきます。
これを『浸潤する』と言い、血行性転移やリンパ節転移を起こす始まりになります。
乳管の中に留まり浸潤していない乳がんのことを『非浸潤がん』あるいは『上皮内がん』、『乳管内がん』と言い、この状態で発見して除術することができればほぼ100%治ることができます。
※右図をクリックすると拡大図をご覧いただけます。
ただし乳管は長く広く続いていますので、その中を長く広く乳がん細胞が進展していることがあり、これをすべて切除するためには、たとえ早期乳がんである乳管内がんといっても乳房切除術が必要な場合もあるのです。
腫瘤、乳頭分泌、疼痛、乳頭陥没、乳頭びらん
当院の乳がん治療は以下のようになります。