午前8:30~11:30
午後13:30~16:30
卵巣にできる腫瘍の総称を卵巣腫瘍と言い、大きくのう胞性腫瘍と充実性腫瘍の2つに分けられます。
のう胞性腫瘍は卵巣のう腫のことであり、そのほとんどが良性です。
腫瘍と聞くと中年期や高年期の方に多いというイメージがあるかもしれませんが、卵巣のう腫は若い方にも多く発症する病気です。
腫瘍が大きくなるまで自覚症状がないことが多いのが特徴です。
腫瘍が大きくなるに伴って、腹部膨満感(お腹が張った感じ)、腰痛、下腹部痛、便秘が見られます。なかには、下腹部のあたりにやわらかいしこりのようなものに気付く方もいます。
さらに腫瘍が大きくなると、「茎捻転」と言って卵巣の根元が回転してねじれた状態になり、突然激しい痛みや嘔吐が起こり、呼吸が速くなる、意識が遠のくなどのショック状態に陥ることもあります。そうなると、緊急手術となることもあります。
また、腫瘍が大きくなっていく過程で腫瘍が「破裂」することもあります。これも同様に突然の下腹痛がおき、緊急手術となることもあります。
卵巣チョコレートのう腫は、子宮内膜症が原因ですが、子宮内膜症の原因はまだはっきりとは分かっていません。
皮様のう腫は原因は分かっていませんが、卵子が受精していないのに勝手に人の体になるための分裂を始めてしまうために起こると考えられています。
気になる症状などについて医師にご相談ください。問診票をもとに、医師から質問をさせて頂きます。 その後、診察台にて内診を行います。子宮頸部を観察したり、エコー検査で腹部または膣の中から超音波(エコー)をあて、子宮や卵巣などの様子を観察したりします。また、必要時には、子宮頸部の表面の細胞を綿棒などで軽くこすり取り、がん細胞などの異常細胞がないかどうかを確認する「細胞診」を行います。
内診やエコー検査の結果、卵巣のう腫が疑われた場合、精密検査を行います。どのような検査を行うかは、問診・内診(細胞診)の結果によりますが、以下のような検査があります。
※CT、MRI検査は予約制のため、受診日当日に検査ができない場合、後日の検査になる可能性があります。
これらの検査結果によって症状を特定し、治療方法(手術など)を決めていきます。
現在、卵巣のう腫の手術は、傷が小さい、痛みが少ない、回復が早いといったメリットがある腹腔鏡下手術で行うことが多くなっています。
腹腔鏡下手術とは、腹腔鏡と呼ばれる直径0.5~1cmほどの長い棒状のカメラを用いた手術です。
腹部に0.5~1cmほどの穴を1~4か所開けて、炭酸ガスでお腹を膨らませてから腹腔鏡を挿入し、腹部内部(腹腔)の様子をテレビモニターで確認しながら、鉗子(かんし)と言われる特殊な細い器具を使って手術を行います。
腹腔鏡下手術は、開腹手術と比べて体を傷つけることが少なく、回復が早いなどさまざまなメリットがあります。
腹腔鏡下手術も開腹手術と同様に、のう腫の大きさや患者さんの年齢、ご希望などによって、卵巣の全摘出かのう腫の部分切除(卵巣の正常部分を残す)かを選択します。
妊娠を望まれている方には、片方であっても卵巣が残されていれば妊娠の可能性はありますので、卵巣を残してのう腫の部分だけを摘出する方法を選択することも可能です。
また、手術後の合併症である癒着(本来離れているべき組織同士がくっつくこと)は不妊の原因となりますが、開腹手術に比べて腹腔鏡下手術は手術後の癒着が少ないので、不妊のリスクを抑えることにもなります。
当院では、腫瘍が大きくない卵巣のう腫の手術に対しては、おへそからアプローチする単孔式腹腔鏡や腟から内視鏡を挿入する経腟腹腔鏡による手術を採用しています。傷が少なくてすみ、早期回復が期待できる単孔式や経腟腹腔鏡による手術は、早期退院・早期社会復帰が可能です。お腹の傷がほとんど目立たないので美容面にも優れた治療方法です。
経腟腹腔鏡下手術(vNOTES)の詳細は下記ページをご覧ください。
手術方法 | 入院期間 | 費用の目安 |
---|---|---|
腹腔鏡下手術 | 7日 | 24~25万円 |
開腹手術 | 10日 | 21~24万円 |
※掲載費用は健康保険利用の自己負担3割の方の金額となります(2024年6月現在)
※上記の表は概算であり、個人の疾患等により期間及び費用は変動します。
※悪性腫瘍はステージやグレードにより手術領域が変わるため費用に差があります。
※高額療養費制度を利用していただけますので、平均的な所得の人であれば、自己負担額は約8万円程度で、それ以上はかかりません(保険適用外の費用は除く)
※保険適用の手術を受けられる方は限度額認定証の事前申請をおすすめいたします。
倉敷成人病センター婦人科は、「婦人科悪性腫瘍の腹腔鏡下手術を確立させたパイオニア」とも言われる安藤正明をはじめ、日本産科婦人科内視鏡学会の技術認定医、日本婦人科腫瘍学会専門医が多数在籍しています。
また、開腹手術よりも傷口が小さいことで患者さんの負担が少なくて済む腹腔鏡下手術を可能な限り提案しており、近年注目を浴びている内視鏡手術支援ロボット「ダビンチ」をいち早く導入し、婦人科の腹腔鏡下手術数では国内でもトップクラスの症例数(2023年実績:1,424例)があります。そのため、全国から多くの医師の見学者が集い、書籍やテレビなどのメディアでも多数取り上げられています。
理事長
婦人科 主任部長
ロボット先端手術センター センター長
安藤 正明